その日はよく冷えた朝でした。停めてある息子の車のフロントウインドウの一部に霜が張り付いているように見えました。寒さのため朝の支度が遅くなり、気づくといつも出勤時間を過ぎていました。慌てて車を出しました。

 このまま行くと遅れそうなので、近道になる旧道を選ぶことにしました。旧道は信号がないので抜け道になっているほどです。その日も早朝にもかかわらず多くの車とすれ違いました。

 飛ばし気味に車を走らせていました。しかし、旧道はセンターラインがなく、やっと車がすれ違える幅しかありません。そこへ電信柱などが立っているのですれ違うときはしばしばブレーキを踏むことになります。

 隣の隣の集落を過ぎたあたりでした。対向して来る白いセダンの動きが不安定に見えました。妙に道路の中央にあるように見えます。私の車が近づいても左に寄る気配がないので、危ないと思って減速し道路端に車を寄せなおかつ停車しました。

 しかし、それにもかかわらずその白いセダンは道路中央を進み、なおかつ私の車に向かってくるではありませんか。ああと思う間もなくガシャンと大きな音がし何かが散らばるのが見えました。

 ああやってしまった。何をしてくれるんだとドアを開けて外に出ようとしたのですが、ぶつかった車が横付けされていてドアを開けられません。

 80歳くらいの分厚い眼鏡を嵌めたご老人の顔が、サイドウインドウ越しにありました。それまで車同士でそんな距離で出会ったことがないくらい近い距離です。パワーウインドウを下ろすとその方はしきりに頭を下げて謝っていました。

 車をどけてもらってから外に出てみました。激しく飛び散ったのは相手の車のホイールカバーだったことがわかりました。私の車は右フェンダーが大きくへこんでいます。傷はフロントグリル方向にも回り込んでいました。



 どうして真ん中を走っていたのかと問い詰めると、左が当たりそうだったと言います。左側には電柱などがありますがそれにしても除けすぎです。

 電信柱より大きな障害物の私の車が、朝日が眩しくて見えなかったのだそうです。確かに朝日が上がってくるところでしたが見えないのなら前に進むべきではないし、少なくとももっと左を走るべきです。

 お互い住所と氏名連絡先を交換して警察の到着を待ちました。パトカーが来て二人の警官が事情聴取を始めました。老人は警官の聴取にも見えなかったと言っています。警官は苦笑いをしながら慣れた様子でペンを走らせていました。

 全ての処理が終わってお互いに別れる時、私は被害者にもかかわらず思わず相手のご老人に気をつけて帰って下さいよと声かけていました。連絡はしてありましたが、職場には30分ほど遅れて着きました。

 その日のうちに相手の保険会社から電話があり、100%相手が悪いと言うことで私は翌日、修理会社に車の修理を依頼し今は保険会社が用意してくれたレンタカーを使っています。

 修理会社の話では今年は台風の被害で車の修理が混み合って、いまだにその影響が残っているのだそうです。私の車の修理には3週間ほど掛かるかも知れないと言うことでした。

 もらい事故とは言え、久し振りの交通事故で少しあたふたしてしまいました。お互い怪我もなく物損だけで済んだので、良かったことにしておきます。






 今夜のJJohn Lewis(ジョン・ルイス)です。昔、MJQとピアノ・トリオで二回聞きに行ったことがあります。理知的で冷静なピアニストというイメージですが、このアルバムの「ディア・オールド・ストックホルム」テナー、ギター、ピアノのソロが快適ですね。バックのベースとドラムのリズムも快調でいかにもジャズらしいジャズを聞いている気がしてきます。