西荻で私の今回の東京旅行は終わったのでしたが、帰りの新幹線乗車までわずかに時間が残っていたので、その時間をどう有効に使うか思案を巡らせました。

 西荻を歩き終えてからでも何とか行けそうなお店が三つありました。荻窪の名曲喫茶「ミニヨン」、新宿のジャズバー「DUG」、四ッ谷のジャズ喫茶「いーぐる」などです。後のお店は不定期だったり、開店時間がもっと遅くて不可能でした。

 三店とも過去に訪れているのですが、新宿の「DUG」以外は記憶がほとんどありません。そういう意味では「DUG」でも良かったのですが、開店時間が一番早いこと、四ッ谷駅から近いこと、東京駅にも近いので、「いーぐる」に行ってみることにしました。

 「いーぐる」はマッチを持っているので、その昔、一度は行っているはずなのですがまるで記憶がありません。ジャズ喫茶なので裏通りにあるものと思っていたら賑やかな新宿通に面していて驚きました。家に帰ってから「ジャズ日本列島」で調べてみたら昔と同じ所でした。

 しかし、店の入り口は地下にありました。地下に降りていく狭いらせん階段、その壁面は懐かしいポスターで覆われていて、雰囲気十分でした。

 店の入り口扉の横には、週刊分冊の広告ポスターが貼られているのですが、なんだか今もマイルス・デイビスが活躍している時代にタイムスリップしたような錯覚に陥ります。

 左の扉を開けると店内です。地下を降りて扉を開ける前から聞き慣れた女性の歌声が聞こえていました。歌の主はどうやら美空ひばりのようです。

 店内に入ると中は地下とは思えない広さでした。そして地下ともジャズ喫茶とも思えない明るさです。歌声は正面の壁面に埋め込まれたJBLの大型スピーカーから流れています。

 ちょうどお昼時だったので、珈琲とセットになったパスタセットのナスとキノコのトマトソースを注文しました。私の後から年配の男性が一人、それから若いサラリーマン風の客が入ってきて、それぞれパスタセットを注文していました。

 オーディオセットは私が座った正面のブラインドの中にあるようです。はっきりと見えませんがターンテーブルらしき金属の輝きが見えます。もう少しオーディオシステムのそばに座るべきでした。

 ホームページの資料によると スピーカーはJBL 4344 Mark ll・ プリアンプ アキュフェーズ C 280V・ パワーアンプ マークレヴィンソン 23.5L・ CDプレイヤー デンオン DCD SA1・ CDプレイヤー アキュフェーズ DP 67・ アナログプレイヤー ヤマハ GT 2000・ カートリッジ デンオン DL 103 LC llとなっています。

 美空ひばりのジャズを聴きながら味わうパスタも珈琲もおいしかったですね。お腹もくちて、ずっとその場で寛いでいたかったのですが、時間が無かったので美空ひばりのCDを一枚聞き終わらないうちにお店を後にしました。

 知らなかったのですが、このお店のオーナー後藤雅洋氏はたくさんのジャズ関係の著書も出しておられるのですね。その作品一覧を見てみたら、読んだ本が数冊ありました。

 「いーぐる」の歴史も1967年からですからもう半世紀近いですね。私が行ったのは1975年頃なのでそれでももう40年の時が経っています。ジャズ喫茶、閉店していく店が多い中で、ずっと四ッ谷の新宿通りで営業続けられているって凄いですね。

  

 1975年当時のマッチです。古い写真を見ると、当時も店内にブラインドが効果的に配されていたようです。オーディオシステムは、アンプがハーマンカードン・サイテーション11、12、レコードプレーヤーがDENON・DP3700F、スピーカーがJBL・130A+LE175+HL91でした。

 今回、マッチはさすがに無さそうだったので、紙ナプキンを失敬してきました。


 

 さて、もう東京駅でお土産を買う時間くらいしか時間がなくなってしまいました。四ッ谷駅に戻る道すがら、緑が多い事に改めて気づきました。四ッ谷駅周辺はあまり降りたことがありませんでしたが、近くに外堀公園があったのですね。

 地図で見ても、皇居や赤坂御用地、新宿御苑などに囲まれています。駅のホームも都心の駅とは思えない緑の多さです。

 四ッ谷駅のレンガは駅員3さんの興味の対象にはならないのでしょうか。




 今回の東京旅行、行ったのは九月末だったのにブログでの報告に約二ヶ月を要してしまいました。長々と思い出をたどるだけの旅の記録でしたが、皆様お付き合いありがとうございました。

 ずっと行きたいと思っていたので、念願を果たせて今はすっきりした気分です。東京に行くと必ず新宿と秋葉原を歩くのですが今回は歩けなかったのが少しだけ心残りです。

 また、当時お付き合いしていた人たちを巡る旅もしてみたかったのですが、いくら東京の街がうつろい安いとはいえ、人ほどではありません。それにそうしたことを考えるにはもう時間が経ちすぎてしまいました。

 前にも言いましたが、今まで東京に行くと若い人が目にとまったのに、今回はなぜか年配の方ばかり目が行ってしまいました。自分を重ね合わせたり、ひょっとして当時すれ違ったり何かしら交渉があった可能性のある人たちというのは、もう年配者しか考えられませんでした。

 念願をひとつ果たして、次はわずか二年しかいませんでしたが、それっきり訪ねていない名古屋に行ってみたいなと思ってます。こちらは近いので日帰りできそうです。

 そしてほぼ20年、ご無沙汰している北海道に行ってみたいですね。これは妻を連れて行かないと怒られそうです。いつになるか分かりませんが、いつか行けるという希望を持って日々を過ごしていこうと思っています。