梅雨入り発表後、ずっと空梅雨が続いていましたが、先日やっと雨が降りました。降り出したら今度はいっとき雨、おまけに台風並みの強風を伴って、職場では看板が飛んだり、家では畑の作物が倒れたり大変でした。

 これから雨の日が多いらしくいよいよ梅雨本番です。雨が降って、植物も人も潤うかと思っていたら、次の日、身体が怠くて閉口しました。

 ずっと晴れて乾燥した日が続いていたので、それに慣れていた身体が、急な天候の変化に着いていけなかったのでしょう。こういうときも体調崩しやすいので気をつけないといけませんね。

 と言いながら、相変わらず仕事と畑に出る以外はAccuRadioを聞きながら、本を読むというちょっと自堕落で安易な生活を続けています。最近は、藤沢周平全集の二巻目、第12巻を読みました。

     

 ところが、「霧の果て」神谷玄次郎捕物控の最終章「霧の果て」を読んでいてあともう少しのところで読み終えると言うところで目が白黒、一瞬何が起こったのかと思いました。



 上の画像では少しわかりづらいですが、ページが右と左で逆さま綴じられています。乱丁ですね。珍しいです。こんな立派な個人全集本で壮丁まちがいがあるとは。文庫本などだとたまに出くわすことがありますが。幸い落丁は無かったので本を逆さまに持って最後まで読み終えることが出来ました。

 この12巻は、「人間の檻」獄医立花登手控えと「闇の歯車」神谷玄次郎捕物控が収録されています。前の11巻に比べると、読みやすかったですね。彫り師伊之助捕物覚えの世界ほど表現が精細緻密でかつ重苦しくなかったせいだと思います。

 「人間の檻」獄医立花登手控えは、設定はともかく登場人物にほのぼのとしたところがありますし、神谷玄次郎も硬軟取り混ぜた主人公であるところが、物語の重さを救っている気がしました。

 作品としては、昭和50年代の中頃に発表されたもので、彫り師伊之助捕物覚えの発表と相前後しているのですが、少し若い作品とこなれて強弱の間合いが絶妙な作品が混在している印象でした。

 すっかり藤沢ワールドに浸かりきってしまって、江戸庶民、町民ものが続いたので(厳密には、獄医立花登手控えも神谷玄次郎捕物控も、庶民ものと武家ものの橋渡し的存在ですが)海坂藩が出てくる武家物を読みたかったのですが、藤沢作品が続くので、ちょっと息抜きに違う本を読んでみようと、本棚にある本を手に取ったのが、これもまたずいぶん以前に古本屋で手に入れた永井荷風集でした。



 現代文学全集の中のものなので、値段は100円だったと思います。この中には文庫本で読んだものもありそうですが、もう忘れているので初見とほぼ同じです。

 ところが本を開けてみてびっくり、「藤沢周平全集」に比べて文字組がきつくて面食らいました。藤沢周平全集も一ページ二段組みですが一行は25文字、21行です。ところが永井荷風集の方は、行数はほぼ同じなのですが一行30文字です。ページ全体に小さな文字がぎっしり詰まった印象で、その圧迫感に開けると同時にすぐ閉じてしまいました。



 一ページの余裕が全然違いますよね。とりわけこの文字の小ささは老眼に堪えます。藤沢周平全集は平成五年発行ですが、荷風全集は昭和四十四年の発行です。総じて、現代に近づくほどページレイアウトは余白を多くとって、読みやすさの工夫をしているように思います。

 しかし、一旦手に取った本をそのままうっちゃっておくわけにもいかず、気を取り直して読み始める事にしました。最初は「腕くらべ」です。

 冒頭にこの作品が大正時代のものであることが著者の言葉で添えられています。しかし当時は検閲が厳しくたくさん削られたのだそうです。そこで翌年、荷風は全編脱稿して私家版として50部を刷ったのだそうです。

 古典とまではいきませんが、言葉遣い、漢字、定型句などが現代とは違うので読むのに少し難渋しています。例えば、「鳥渡」と言う文字が頻繁に出てきます。

 これは地名だったか人の名だったかと思えば、読みは「ちょいと」で現代風に言うと「ちょっと」という副詞なんですね。副詞は現代ではひらがな表記が当たり前なので、面食らいます。こういう表現がところどころ出てきます。

 今、ようやく「腕くらべ」を読み終えて次の「おかめ笹」を読んでいるところです。「腕くらべ」は永井荷風ワールド全開と言うところで、その描かれている世界、筋だても面白かったです。苦労して読んだだけのことはありました。

 大正時代の色街に生きる芸者の世界を一人の芸者を通して描いています。その世界はしんどいものなのですが、最後に荷風は女主人公を救ってほっとします。

 今読んでいるのは、「おかめ笹」なのですが、「腕くらべ」ほど展開も登場人物も面白くないので、なかなか進みません。






 今夜のCCannonball Adderley(キャノンボール・アダレイ)です。彼のアルバムとしては「マーシー・マーシー」などもあるのですが、有名な「サムシング・エルス」から「ダンシング・イン・ザ・ダーク」です。このアルバムは契約の関係でキャノンボール・アダレイのリーダーアルバムになっているが実質のリーダーはマイルス・デイヴィスなどと言われていますが、有名な「枯葉」にしても、キャノンボール・アダレイは怪演しています。この「ダンシング・イン・ザ・ダーク」では、彼のアルトソロが存分に展開されていて改めて聞き惚れました。